2019年4月

ケアマネ備忘録~忘れられぬ日々~ (居宅介護支援事業所)

若い頃から山に登ることが大好きだったという利用者のSさん。年を取ってからも80歳までは気の向くまま近隣の山へ出かけていたそうです。

私が訪問に伺うとまずは、「最近はどこか(の山)へ行かれましたか」と聞いてくるのがお決まりの挨拶でした。

「なかなか忙しくて出掛けられなくて」と、これもお決まりの返事をします。

「そうですか、まあどうぞ」とイスを勧めてくれます。一通りの様子伺いのあと、満を持した様子で、そこからSさんの思い出話が始まります。

 

「あの時代はねぇ、大した装備もなく寒さをしのぐのも大変だったよ」

「○○稜線の雨で避難した岩陰は、とても甘い匂いがしたんだ」

「△△山頂から見た夕日の美しさは忘れられない」

 

毎回似たような話しばかりなのですが、ゆっくりとひとつひとつを確かめるような口調で思い入れのあるエピソードを話してくれます。途中私の経験話にも目尻に深いしわを作りながらうなずいてくれました。

遠い目をした長い話しは、やがて短い沈黙で終わりになりました。

 

亡くなる前月までSさんは私にあれこれと山の話をしてくれました。同じ山を愛する大先輩としてSさんは”未来の私”でもあったと思っています。

時々思い出しては問いかけています。

「89年間、楽しい人生でしたか?」

            by T.H

 

写真はイメージです